第五回在宅医療勉強


すぎなみ在宅診療所で第五回在宅医療勉強会が行われました。今回の勉強会は、ターミナルケアと疼痛管理の症例検討を行いました。
今回も多くの方にご参加いただきました。ありがとうございます。また次回の在宅医療勉強会も何卒、宜しくお願いいたします。

在宅医療勉強会の様子
在宅医療勉強会の様子

第一回在宅医療勉強会の様子

第二回在宅医療勉強会の様子

第三回在宅医療勉強会の様子

第四回在宅医療勉強会の様子

在宅医療の症例検討

CASE1~ターミナルケアの患者様の症例

42歳男性の方で脳腫瘍に診断を受けました。腫瘍摘出術を施行されたが、
再発して抗癌化学療法等の治療を受けたが進行します。
そして頚髄から腰髄にかけて転移が拡がり意識レベルの低下、下半身麻痺が出現します。
その後、急激に増強したため、当院に緊急往診の依頼がありました。

5月より初回の往診(内服整理、追加投与)。病院外来受診。以後外来受診せず、在宅医療で緩和ケアを行うことになります。
嚥下機能が低下しオキシコンチンとハルシオン以外は定期内服薬を中止、不穏時頓用はセレネースのみ、
ホクナリンテープ使用開始、1日500ccの輸液を補助的に開始します。
訪問入浴を週1回で開始、吸引器導入。嚥下がさらに低下します。
輸液1500ccに増量、デュロテップMTパッチ4.2mg開始、レスキューでオプソ液使用、眠剤はヒルナミン散で対応しました。

6月に入り、右眼奥を痛がっている様子からデュロテップMTパッチを8.4mg(倍量)に増量します。
嘔吐が頻繁にあり、ナウゼリン坐薬60mgを1日2回定時で挿肛しました。
尿量が低下(夜間100cc)したため、グリセオール200ccを1日1本補液開始しその後、尿量1500~2000ccに回復します。

7月 尿量は良好、バイタル安定、しかし瞳孔の大きさに左右差がみられ対光反射消失、
採血上電解質バランスがくずれはじめました。(Na111)
生理食塩水補液による電解質補正を開始、呼吸が努力性となります。
点滴ルートもれありますが、新たなルートを確保できず、血圧80/56と低下し、血管確保不能となります。
右肺呼吸音なく無気肺、Satが84以上上昇せず緊急でHOT導入(5リットル、マスクでSat92~96%)。
死期が近いことを説明して、その3日後、Sat測定不能となり血圧低下から逝去されました。

CASE1~メモ

抗がん剤治療が無効であった脳腫瘍の男性。

初回往診時、疼痛コントロールが不良であり、家族の精神状態も不安定であった。

余命は短期間であったが、疼痛コントロールが良好となり、一時は家族との会話も可能となった。そのため家族の精神状態も安定し、病状を受け入れることが可能となった。

家族にも治療に参加してもらい、また訪問看護との連携を良好にすることで、満足のいく最後を迎えることができた。



在宅医療の症例検討

CASE2~疼痛管理の患者様の症例

17歳の時に反射性交感神経ジストロフィーと診断されます。翌年病院にて、
疼痛管理目的で硬膜外アルコールブロック注射を施行された後から第5頚椎以下の部分麻痺が残存した状態です。
ADLは寝たきりで、気管切開・胃瘻・膀胱カテーテル・PICC(中心静脈栄養ライン)あり、意識はクリアです。
上肢の麻痺は認めるがスマホやパソコンは操作できています。入院中胃瘻中心の栄養摂取を試みたが、胃容量が少ないようで、
250ml注入が限界であり、気分不快・嘔吐を生じることからPICC挿入されています。
PICCは細胞外液補液(水分補給)が主となっています。 

退院後往診から週1回の往診を開始します。1週間後PICCカテ閉塞。入院(5日間)にて新たに左上腕にカテ挿入します。
1か月後PICCカテ挿入部の発赤腫脹と発熱。感染症のためPICC抜去(在宅にて)します。
その後末梢静脈から輸液を1日1000ml施行継続。強い痛みが間歇的に出現するため
以前からアタラックスPやセルシンを静脈注射していたが、それも継続していました。

2か月後 PEGの状態確認と必要なら別部位へ入れ直し依頼し、連携病院受診。内視鏡所見で問題なし。
さらに2か月後 痛みに対しデュロテップMTパッチを開始。2.1㎎から徐々に増量したところ痛みも漸減し、
3か月の時点で8.4㎎を使用して注射薬はほとんど使用せずに過ごすことが可能となった。

3か月後 Ajinomotoメディプッシュケア300Cal/120grを勧めて変更した。1回量が少なくなり、本人から楽であると継続することを希望された。
3か月後 経口での飲食を希望され、声門閉鎖術あるいは気管食道分離術を受けるため
待機状態。術後は発声は不可能となることも承知している。

手術適応なしと診断され、退院となりました。嚥下機能専門の訪問歯科医に依頼し、嚥下訓練中。
径口摂取により、PEG栄養は施行していません。

CASE2~メモ

難病、寝たきりの女性。気管切開状態のため飲食できず、PEG設置されたが、1回注入量が少量のため水分は点滴で補給していました。

中心静脈栄養がトラブル続きでうまくいかない。また、末梢血管が脆弱なため点滴も困難な状態でした。

全身痛がひどく、疼痛コントロールとして注射薬を使用していたが麻薬使用により効果が得られました。

栄養食品を変更することで嘔気・嘔吐を伴わなくなり、カロリー摂取が良好となりました。

嚥下専門歯科医の指導により経口摂取中。経管栄養は中止しています。


在宅で最期を迎えるために

救急車を呼ばない

  • どんなことが起きるか、それに対してどういう対応方法があるか、事前に説明しておく。

本人・家族との信頼関係

  • 痛みや未知の事象に対する不安・恐怖への対応

関わる全員の意識一致・情報共有

  • あわてないように病状や対応策を共有する

前のページに戻る