第11回在宅医療勉強


すぎなみ在宅診療所で第11回在宅医療勉強会が行われました。
今回の勉強会は、終末期医療の症例検討について行いました。
今回も多くの方にご参加いただきました。
ご清聴ありがとうございました。

在宅医療勉強会の様子
在宅医療勉強会の様子

過去の在宅医療勉強会
第1回(抗がん剤治療・介護食のご案内) 第2回(ノロウィルスとノロウイルス抗原キット) 第3回(認知症について)
第4回(胃ろう(PEG)と関連商品のご紹介) 第5回(ターミナルケアと疼痛管理の症例検討) 第6回(褥瘡と糖尿病の症例検討)
第7回(QOL維持のための貧血治療) 第8回(寝たきりの患者様の症例検討・脱水症・熱中症) 第9回(パーキンソン病と症例検討)
第10回(肺炎の症例検討) 第11回(終末期の症例検討)  

在宅医療の症例検討(終末期医療)

CASE1~脳腫瘍

平成20年より頭痛に悩まされ近医を受診したところ脳腫瘍を指摘され、病院を受診されました。
腫瘍摘出術を施行されたが、再発し放射線療法(サイバーナイフ含む)、抗癌化学療法などの治療を受けましたが進行。
翌年には頚髄から腰髄にかけて転移が拡がり意識レベルの低下、下半身麻痺が出現するに至りました。
病院に月に1回外来化学療法施行のため通院していたが、5月に入り急激に痛みが増強したため当院に緊急往診の依頼。

同月、右眼奥を痛がっている為デュロテップMTパッチを8.4mg(倍量)に増量します。
また嘔吐も頻繁に出現。ナウゼリン坐薬60mgを1日2回定時で挿肛します。
約二週間後尿量が低下(夜間100cc)した為、グリセオール200ccを1日1本補液開始。2日後尿量1500~2000ccに回復しました。

経過 尿量は良好、バイタル安定しました。しかし瞳孔の大きさに左右差がみられ対光反射消失、
採血上電解質バランスが崩れはじめました(Na111)
翌日生理食塩水補液による電解質補正を開始、呼吸が努力性となりました。

次の日点滴ルートもれあるが、新たなルートを確保できず、血圧80/56と低下し、血管確保不能。
右肺呼吸音なく無気肺、Satが84以上上昇せず緊急でHOT導入(5リットル、マスクでSat92~96%)
死期が近いことを説明しました。その次の日 Sat測定不能・血圧低下となり逝去いたしました。

CASE1~メモ

抗がん剤治療が無効であった脳腫瘍の男性。

初回往診時、疼痛コントロールが不良であり、家族の精神状態も不安定でありました。

余命は短期間であったが、疼痛コントロールが良好となり、一時は家族との会話も可能となった。そのため家族の精神状態も安定し、病状を受け入れることが可能となった。

家族にも治療に参加してもらい、また訪問看護との連携を良好にすることで、満足のいく最後を迎えることができた。



CASE2~右乳頭直下に2.5㎝大の腫瘍の患者様

めまいに困っており、内服薬はずっと変わらず処方されていたが、効果が出ていませんでした。その為全ての内服薬を変更します。
めまいは脳転移の症状の可能性がある為 長男と電話で話をしました。
病状を知りたがったので、めまい・頭痛とも脳圧亢進(脳転移)が原因であろうと説明した所、何か検査はしたほうが
良いかと問われたので、したほうが治療法が決まりやすいことを説明しました。

乳癌創部からの出血が多くなり、止血用アルト原末使用を開始しました。
脳CTに関して、「造影が必要」と病院医師からのコメントがありました。また腎機能チェックのため血液検査を施行しました。B型肝炎ウイルスキャリアに関しても感染性の有無を確認。

めまいは改善傾向にあります。ただ転倒し、頭部、左ひじ、左肩、尾骨を打撲、湿布貼布しているがロキソニン錠も頓用で処方。
B型肝炎はキャリアーでなく陰性です。また本人は検査を望まず、長男と緊急対応について話し合いをもちました。
病院・ホスピスは拒否され自宅で、と言われるが本人が電話できない時は訪問者が発見することになると説明し承知されました。

穏やかにベッドで過ごされる。背中の痛みあり、時々ロキソニン錠を内服しています。歩行は全くしていません。
右胸の癌腫瘍が左胸に拡がっており、圧痛あり。癌が浸潤していることも説明しました。
朝のヘルパーが入室した時は会話していたが、昼のヘルパーが入室した時に呼吸停止状態を発見。当院へ連絡あり。
緊急往診で死亡確認を致しました。

CASE2~メモ

日本語話せない高齢女性。乳癌末期で独居状態。長男、次男とも英語での会話を望まれる。

夫がオーストラリアから日本へ来航。夫と夫の両親を日本で、在宅で看取った経験ありました。

日本の医療システムを理解できなかったが、通院不能な身体状況になった時、往診が必要と理解されました。

末期で癌が浸潤増悪していることを冷静に受け止め、誰に看取られなくても自宅で最期をむかえることを選択しました。



在宅で最期を迎えるために

救急車を呼ばない

  • どんなことが起きるか、それに対してどういう対応方法があるか、事前に説明しておく。

本人・家族との信頼関係

  • 痛みや未知の事象に対する不安・恐怖への対応

関わる全員の意識一致・情報共有

  • あわてないように病状や対応策を共有する

在宅医療の役割

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