第八回在宅医療勉強


すぎなみ在宅診療所で第八回在宅医療勉強会が行われました。
今回の勉強会は、寝たきりの患者様の症例検討とこれからの季節に起こりやすい脱水症熱中症について行いました。
今回も多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。また次回の在宅医療勉強会も何卒、宜しくお願いいたします。

在宅医療勉強会の様子
在宅医療勉強会の様子

過去の在宅医療勉強会の様子
第1回(抗がん剤治療・介護食のご案内) 第2回(ノロウィルスとノロウイルス抗原キット) 第3回(認知症について)
第4回(胃ろう(PEG)と関連商品のご紹介) 第5回(ターミナルケアと疼痛管理の症例検討) 第6回(褥瘡と糖尿病の症例検討)
第7回(QOL維持のための貧血治療) 第8回(寝たきりの患者様の症例検討・脱水症・熱中症)

在宅医療の症例検討

CASE1~寝たきり、廃用の患者様

寝たきり、廃用の為、訪問看護を利用してリハビリも進めていたが、デイサービス等の利用は拒否し、
徐々に認知症状が出現、それとともに嚥下機能の低下を認めました。
H25年1月頃から、訪問リハもバルン管理や全身管理に時間をとられ進まなくなり、4月には
下肢筋力低下しているにもかかわらず、徘徊が始まり、転倒を繰り返すようにりました。

呂律がおかしく、言葉が不明瞭であるが麻痺はなく、バイタルも問題なかったが尿量が600mlまで低下したので、
1日200mlのリンゲル液を点滴開始した。その際の血液検査では尿素窒素が30.6まで上昇していた。
Crは1.1で問題なかった。Albが4.0と正常値を保っていた。家人に今後の方針を打診:経管栄養を希望するか。
肺炎のリスクはあるが経口摂取で自然に看取るか。→末梢点滴をしながら、できるだけ経口摂取を希望。

以後週3回、末梢点滴を継続し、糖尿病薬や他の内服も減量しながら、経口摂取を続けた。
尿量はすぐに増加し、その後7月末頃から食事摂取量も増加した。血液検査上は尿素窒素、Albとも横ばい。
9月誤嚥なく飲食可能、尿素窒素は22まで低下したが、Albも3.5に低下。褥瘡予防マットを導入した。
11月に入り、発語がほとんどなくなり、飲食量もさらに低下。
尿量が再び700ml以下となったが、家族と話し合い、輸液量は増やさず、看取り対応に変更した。

11月13日以降、ほぼ毎日電話でのやりとり。訪問看護と連絡を取りながら対応した。
食事摂取量は低下しても、少しでも経口で摂取できるよう家族は時間をかけて食事介助していた。
尿量がさらに低下し、尿道バルンカテが閉塞気味になるため、その都度膀胱洗浄やカテ交換で対応した。
19日呼吸停止したようだと娘から訪問看護師に連絡あり、その後往診し死亡確認。家族は落ち着いて対応していた。

CASE1~メモ

大学教授であったため、賢明であり、自身の状態も把握してました。

胸部、心音には異常なし。下肢筋力低下による廃用・寝たきり状態のため、排泄もオムツ対応でした。

24時間ベッドで過ごしていて、食事もベッド上で摂取。妻も疾患を有しており介護力なく、同居の長女もストレスでパニックになることがあるが主介護者が食事提供をしていました。

尿道バルンカテ挿入中、当初14Fr挿入されていましたが、たびたび閉塞するため18Frにサイズアップしました。



脱水症について

高齢者の方はこまめに水分摂取しましょう!

高齢者の方は、若者に比べて20%ほど体内の水分が少ないので脱水症状になりやすく、喉が渇いても自分ではなかなか気付かないようなので、周りの方が気を付けなければなりません。とにかく水分をこまめに取るように!習慣づける事が大切です。

飲む

健康の維持~一日に1000cc位の水分摂取

健康の維持のためのは一日に1000cc程度の水分は摂取することが望ましいとされています。となると、2度や3度でまとめて飲むのは難しいでしょう。少量多頻度の飲水を心がけること。水分をとるのが苦手な方は、果物、ヨーグルト、ゼリー、プリン、アイス、シャーベットなど利用しましょう。
※心不全・腎不全と診断され、水分制限されている方は、1日800ml程度の摂取と言われています。ただ発汗が多いときは、800mlを超えて水分摂取をする必要があります。普段の尿量を目安にできるように、1日の排尿回数や、できれば排尿量を覚えておくと良いでしょう。

水分補給の目安に!

(1)朝起きたら1杯、食事中にも必ず1杯、間食の時も1杯、入浴前の1杯、入浴後の1杯。
お風呂前後は必ず水分補給した方が良いです。食事の中にスープなど水分を多く含むものを取り入れる事もよいです。
(2)もし脱水状態になった場合、スポーツ飲料などの吸収の早い飲み物を与えます。

脱水症の判定

脱水に陥っているかどうか、簡単に判定する方法。広く言われているのは「脇の下に手を差し入れて湿気を確かめてみる」。もともと皮膚の乾燥しがちな高齢者でも、正常であれば脇の下には湿り気があるとされている。上記のような症状が見られると同時に脇の下がかさかさに乾燥していたとしたら、強く脱水が疑われる。

熱中症について

  • 水分摂取(スポーツドリンク)喉が渇かなくてもこまめに飲む。室内では30分に1口。
  • 吸湿性の良いゆったりした服装をする。(汗をよく取る服装)
  • 自宅では窓を開けて風通しを良くする。
  • 自宅では時々室温を測る自分の体感に頼らず、体温計で検温し、37.5度以上なら熱中症を疑う。(高齢者は気づかない内に体温が上がっている)
  • 体を涼しくしておく。(暑いからと、水風呂に入るのは良くない。汗腺が閉じてかえって体内に熱がこもる。シャワーがよい)

水分補給の目安に!

水分は胃ではなく小腸で吸収されます。従って、速効を求めるなら、冷たい(5-8度)水が良いです。冷水は胃が早く動いて通過し、小腸に早く到達します。
喉が乾く前に少量づつ飲むのがコツです。一気に大量飲んでも吸収が悪く、胃に水がたまり、結果として食欲が落ちてしまいます。また、飲んだ水が体内に吸収されるのは20分はかかります。

ビールなどのアルコール類は、水分の補給にはなりません!ビールは排尿を促進し体から水分を放出するため、逆に血液が粘稠になるのでビールを飲んだので水分補給したと勘違いしてはいけません。さらにアルコールは脳の熱のコントロール機能が低下し、脱水症状を助長する事になりますので注意が必要です。
酒を飲んで高温のサウナに入るのは危険です。
日常生活でスポーツドリンクを飲み過ぎると塩分の他に糖分を摂りすぎることになるので、スポーツドリンクは運動時のみにしましょう。
25度で死亡した例もあるため、気温が低くても湿度が高いときは注意が必要です。特に梅雨明けのどんよりと曇って蒸し暑いときは、湿度が高いと汗が蒸発せず、熱が体外に逃げないので体温が上昇してしまいます。

風呂

睡眠前の注意事項!

  • 寝る前に、水をコップ1杯飲む。
  • 枕元に熱中症対策ドリンク:水500ML+塩0.75G+蜂蜜大さじ1+レモン汁
  • エアコンをつける、27度~29度にセット、風は人間に直接向けない、タイマー活用。
  • エアコンを付けないときは窓を開ける。扇風機を弱で風向きは壁に当てる。
  • 吸湿性の良いゆったりした服装をする。(汗をよく取る服装)
  • 枕元に温度計、湿度計を置く 温度が30度以上、湿度が60%以上なら要注意。除湿器を活用すると良い
  • 高齢者は喉が渇いてなくても努めて水分摂取する
  • 寝る前に酒はのまない。ビールは利尿剤で尿がたくさん出てかえって体内の水分不足になる

睡眠時

熱帯夜が続くような時、クーラーが嫌いな人は特に注意が必要です。クーラーをつけずに暑い部屋で寝ていると熱中症になることがあります。
湿度が高いと汗が出てもなかなか蒸発しないので体温が下がらず、熱中症になりやすので注意してください。せめて寝る前にクーラーで部屋・布団・枕を冷やしておくのは予防に有効です。設定温度は28度で夜中の2-3時までにしましょう。


高齢の方は

高齢者は喉が渇く感じが鈍っていることも多く、水分を摂らず結果的に脱水状態になっている事があるので、喉が渇いた感じが無くても適量の水分を積極的に摂る習慣が必要あります。気温30度以上、湿度65%以上の場合は、時々検温し37.5度以上の場合は熱中症を疑い予防をしましょう(麦茶、梅干し、アイスノン等でワキや太股を冷やす等々)

介護・医療連携をスムースに

  • 自分一人で判断しない。
  • 家族と同居の場合、家族の判断も求める。(普段と違う?いつからこの状態?)
  • 独居の場合、状態をノートに記載したり、メモに残して、別の訪問者に伝える。
  • ためらわず連絡し、指示を仰ぐ。
  • 訪問介護者はケアマネを通じて、訪問看護師は直接医師に。

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